映画レビュー:『ミッション:インポッシブル』(1996)

すべてはここから始まった——最初の“ミッション”が世界を変えた。


MISSION:極秘リスト「NOC」の流出、その真相を追え

1996年、CIA内部で極秘のスパイ情報リスト「NOC(Non-Official Cover)」の一部が流出するという重大インシデントが発生。この危機に出動したのは、CIAの特殊工作部隊IMF(Impossible Mission Force)。

指令を受けたのは、IMFに所属する優秀なエージェント、イーサン・ハント(トム・クルーズ)。彼は、チームリーダーである**ジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)**率いる一流のメンバーと共に、リスト回収と内部に潜む裏切り者の特定という“二重のミッション”に挑むこととなる。

任務の始まりは、飛行機で移動中のフェルプスに届けられた一本の録音テープ——
「このテープは5秒後に消滅する」。
かつてのTVシリーズを彷彿とさせるこのフレーズがファンの心を躍らせ、映画の幕が上がる。

だが、作戦は想定外の展開を迎え、チームは壊滅。唯一生き残ったイーサンは、任務失敗の濡れ衣を着せられながらも、真犯人を突き止めるため、孤独で危険な捜査に身を投じていく。


登場人物相関図(主要キャスト)

  • イーサン・ハント(トム・クルーズ)
     IMFの切れ者エージェント。任務遂行能力、判断力、体力すべてが超一流。
  • ジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)
     IMFチームのリーダー。かつてのTVシリーズの主人公でもある伝説的存在。
  • クレア・フェルプス(エマニュエル・ベアール)
     ジムの妻でIMFメンバー。美貌と謎めいた雰囲気を併せ持つ。
  • フランツ・クリーガー(ジャン・レノ)
     元IMF工作員。イーサンと一時的に手を組むも、その真意は不明。
  • ルーサー・スティッケル(ヴィング・レイムス)
     凄腕ハッカー。シリーズを通じてイーサンの頼れる相棒となる存在。

名場面:地上ギリギリ、伝説の「宙吊りミッション」

映画史に残る名シーンといえば、やはりこの宙吊りアクション。
イーサンがCIA本部の極秘データ室に、天井からワイヤーで降下。床に一切触れてはならないという過酷な状況の中、ピタリと地面スレスレで停止する緊迫の瞬間。そして、顔をつたう汗が一滴、静かに落ちそうになる——観客の呼吸も止まる極限のサスペンス。

このシーンは、1964年の映画『トプカピ』へのオマージュとされるが、本作の登場以降、「宙吊り潜入」はスパイアクションの定番演出として定着。パロディやオマージュも数多く生まれ、トム・クルーズの元妻、ニコール・キッドマンもある作品でこのシーンを再現したほど。そのインパクトの強さは、今なお語り継がれている。


見どころ:スパイ映画×ロマンス=イーサンの苦悩

もうひとつ注目したいのは、イーサンの“報われない恋心”
彼がひそかに想いを寄せるのは、ジムの妻であるクレア・フェルプス。任務を共にする中で彼女に惹かれていくも、その感情を表に出すことも叶わず、さらには彼女の言動に翻弄されていく。使命と私情の狭間で揺れるイーサンの姿は、単なるアクションヒーローではなく、感情を持つ一人の人間として観客の共感を誘う。

母性本能をくすぐる、ちょっと不器用で真っ直ぐな男——
それがこの第1作のイーサン・ハントだ。


総評:すべてはここから始まった

『ミッション:インポッシブル』第1作は、アクション、サスペンス、スパイ、そして微妙な人間関係が絶妙に絡み合った、完成度の高い作品。ブライアン・デ・パルマ監督ならではの緻密な構成と映像演出、そしてトム・クルーズの存在感が、ただのスパイ映画にとどまらない重層的な魅力を生み出している。

シリーズの原点として、すべての「ミッション」がここから始まったことを感じさせる、記念碑的な1本だ。


評価:★★★★★(5/5)
ジャンル:スパイ/アクション/サスペンス
監督:ブライアン・デ・パルマ
主演:トム・クルーズ、エマニュエル・ベアール、ジョン・ヴォイト、ジャン・レノ
公開年:1996年
上映時間:110分


ご希望があれば、第2作以降のレビュー記事もご用意できます。シリーズ通して読みたい方はお気軽にどうぞ!

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